この記事では、中古不動産の耐用年数について詳しく解説します。
耐用年数とは長期にわたって使用する固定資産の使用可能と見込まれる年数のことです。
税務上決められている耐用年数を法定耐用年数といい、その資産が完全に使用不可能になるものではありません。
この法廷耐用年数は中古資産の耐用年数には使われず、中古不動産では新たに耐用年数を算定する必要があるんです。
そこで、中古不動産の耐用年数の計算方法や減価償却に関して解説します。
中古不動産の耐用年数の計算方法は大きく2種類ある
中古不動産の耐用年数を算定する方法について詳しく紹介します。
中古不動産の耐用年数の算定 その①:簡便法
使用可能な期間を見積もることが難しい場合は簡便法を使用することができます。
見積法での算定は費用面などから見て難しいので基本的には簡便法を用いることが多いようです。
簡便法では、入手した中古資産が法定耐用年数を過ぎているか、そうでないかで算方法が変わります。
- 法定耐用年数のすべてを経過した資産の場合は、その法定耐用年数の20%に相当する年数で算定します
- 法定耐用年数の一部を過ぎた資産の場合は、法定耐用年数から経過した年数をひいて経過年数の20%の年数を加えて算出算定します
1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年となります。
中古不動産の耐用年数の算定 その②:見積法
法定耐用年数というのは新しく作ったものに対して作られた基準のため、中古不動産にそのまま法定耐用年数を使うことはできません。
そのため見積法で算定するためには、技術と知識を持った人に調査依頼して作成することになります。
これらを行うには追加費用が必要となるため見積法での耐用年数の算定は現実的ではないでしょう。
なお、簡便法を採用した場合途中で見積法に変更などはできません。
中古アパートの減価償却と耐用年数
アパートの場合に限らず減価償却の対象は建物の部分だけで土地は対象外です。
減価償却では、固定資産が時の経過で価値を失っていくというのが基本的な考え方です。
したがって老朽化していく建築物は減価償却の対象になりますが、土地は減価償却の対象にはなりません。
ただし、不動産会社への手数料などは減価償却の対象になります。
以下法定耐用年数の一例を示すと、以下の通りです。
- 鉄筋コンクリート47年(住居用のもの)
- 木造・合成樹脂造のもの22年(住居用のもの)
- 木骨モルタル造のもの20年(住居用のもの)
(以上は住居用のものに対する耐用年数になり他の条件になると年数が異なります。)
中古不動産の場合は、法定耐用年数から見積法や簡便法により耐用年数を出して減価償却していきます。
古い物件の場合耐用年数は法定耐用年数とは違い、数年というようなこともよく起こります。
例えば木骨モルタル造の経過年数22年の物件の場合、簡便法で耐用年数を算定すると4年となります。(計算は下記)
法定耐用年数は20年なので
20年×20%=4年
耐用年数を長くしたいもしくは短くしたい、と考えている場合は、経過年数や構造の違いなども考慮する必要があります。
短い耐用年数を希望なら古い中古アパートは法定耐用年数が比較的短いので耐用年数が短くなりやすいです。
ただし修繕などにコストがかかることは配慮が必要です。
中古マンションの減価償却と耐用年数
マンションの場合でもアパートと同様に、減価償却の対象は建物の部分だけです。
土地は価値の変わらないものとして減価償却の対象にはなりません。
例えば鉄筋コンクリートの経過年数25年の物件の場合、簡便法で耐用年数を算定すると27年となります。(計算は下記)
法定耐用年数は47年なので
47年-25年=22年
25年×20%=5年
22年+5年=27年
こうして算定した耐用年数をもとに減価償却していきます。
また、減価償却には定額法と定率法があります。
簡単に言うと、定額法とは毎年一定の金額を計上する方法で、定率法は定められた一定の割合を未償却残高にかけて算出する方法です。
定額法であれば毎年同じ償却金は同じになりますが、定率法は初めほど多くだんだん金額が少なくなっていく方法です。
幾度かの法改正により今は特定の期間に取得した資産以外は定額法の償却を行います。
減価償却などで毎年節税対策をしていても購入から売却までトータルで見ると損をすることもあります。
特にマンションの場合鉄筋コンクリートがほとんどなので減価償却の期間が長くなりやすく節税効果はあまり期待できないかもしれません。
そのことも理解した上で勧められるままに投資せず、専門家などにアドバイスを求めると良いでしょう。
リフォーム部分の費用化や減価償却
中古不動産の場合修繕が必要になることも多いですよね。
この修繕に関しても費用化したり減価償却したりすることができます。
基本的に修繕費として計上できるものは現状の維持、回復のために使われた支出をさします。
機能のアップや性能のグレードアップを可能にする修繕は、資本的支出として固定資産の価値増大として減価償却します。
たとえば修繕費として計上できるものは
20万円未満
3年以内などの短周期での修繕
明らかに維持管理、原状回復のための修繕
資本的支出として計上するものは
元の状態より価値が上がる場合
元の状態より機能がアップする場合
同じような作業でも固定資産の価値を高める行為は資本的支出となることがあります。
例えば、基本的に外壁の塗装は修繕費になりますが、以前になかった効果のある材料を用いた場合などは資本的支出となります。
また中古不動産をグレードアップさせる修繕を行った場合、修繕の支出がその中古不動産の取得価格の50%を超えると簡便法による耐用年数の算定はできなるので注意が必要です。
この場合別の算定方法を使うことになります。
中古資産の耐用年数の算定方法のまとめ
- 中古資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく新たに耐用年数を算定する。
- 法定耐用年数とは税務上設けた期間なので不動産の寿命を表すものではないが、建築様式などで期間が違う。
- 中古資産の耐用年数は見積法か簡便法で算定する。
- 見積法の算定は難しく費用もかかるため簡便法の方がよく使われる。
- 簡便法は法定耐用年数と経過年数によって算定する。
- 算定された耐用年数を定額法で減価償却していく。(一定の年代に取得したものに関しては定率法が使われているものもある。)
- どれだけ節税対策しても投資のトータルで見ると損になることもある。
- 修繕にかかった支出も修繕費や資本的支出として計上できる。
中古不動産の減価償却と耐用年数について、以上のようなことをお伝えしました。
ぜひ注意して頂き、上手に活用していきましょう。