この記事では、「出前館が扶養内で働けるのは年間いくらまで?」という疑問について解説します。
結論からいうと、出前館で働ける年間の金額は48万円です。
仮に48万円以上を稼いでしまうと、扶養から外されて、扶養者とご自身に大きな問題が生まれます。
また、状況次第では大きく損をする可能性もあります。
しかし、本記事をお読みいただければ、そういった問題を未然に防ぐことができるでしょう。
絶対に損をしたくないという方は、ぜひ最後までお付き合いください。
そもそも出前館の扶養とは何か?
出前館などで働くにあたって、配偶者または、親の扶養に入っている方たちも多いかと思います。
しかし、あなたはそもそも「扶養に入る」ということを、どれだけ理解しているでしょうか?
おそらく、なんとなくは分かっていても、キチンと説明するのは難しいかと思います。
そこで、まずは扶養についての基礎知識を、なるべく簡単に解説させてもらいます。
出前館の扶養とは
扶養というのは、子どもや親、あるいは親族を養うことで、所得に対して控除が受けられる制度のことをいいます。
これを「扶養控除」といい、適用されると扶養する人の所得税が軽減されます。
基本的に所得税というのは、稼いだ所得額に対して発生します。
しかし扶養控除をつかえば、その所得額から扶養される人の、年齢や続柄に応じた金額を差引いてもらえるのです。
その結果、課税される所得額が少なくなるので、所得税の金額も安くなるという訳です。
注意点としては、配偶者が扶養控除の対象にはならないことです。
ただし、配偶者の場合は「配偶者控除」あるいは「配偶者特別控除」どちらかの控除制度が適用されることになります。
ただ、今回お伝えする扶養控除とは、まったく別の制度です。
扶養控除が適用される条件ですが、基本的に年齢に関しては、16歳以上であれば制限はありません。
ただし、扶養する人の年齢や続柄で、控除額は違います。
扶養控除額の一覧 | ||
---|---|---|
年齢 | 対象者の区分 | 所得税の控除額 |
16歳~18歳 | 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
19歳~22歳 | 特定扶養親族 | 63万円 |
23歳~69歳 | 一般の扶養対象親族 | 38万円 |
70歳以上 | 老人扶養親族(同居) | 58万円 |
70歳以上 | 老人扶養親族(別居) | 48万円 |
控除してもらえる金額としては、16歳~18歳と23歳~69歳が対象者の場合は38万円と決められています。
注目すべきところは、19歳~23歳の控除額が63万円ということです。
これを※①特定扶養親族といいます。
また、70歳以上では、同居しているかどうかで控除額は異なります。
納税者、または配偶者の※②直系尊属との同居であれば58万円、そうでなければ48万円の控除が受けられます。
※①特定扶養親族は、その年の12月31日現在の時点で、19歳から23歳未満の扶養控除対象親族
※②直系尊属は、父や母、または祖父母などで、血のつながった直系親族で、叔父や叔母は該当しない。
※③老人扶養親族は、その年の12月31日現在の時点で、70歳以上の扶養控除対象親族
出前館の扶養になる要件
<出前館の扶養になる要件>
出前館でアルバイトなどをする際に、扶養控除の対象者となるには、一定の条件があります。
親族であれば必ず扶養される訳ではないので注意が必要です。
ということで、ここからは扶養控除の条件をそれぞれ解説していきます。
出前館の扶養になる要件①:配偶者を除いた親族
扶養控除の対象になる条件の一つ目は、配偶者を除いた親族が該当します。
基本的な注意事項ではありますが、配偶者は扶養控除の対象ではありません。
対象者としては、原則「6親等内の血族」あるいは「3親等内の姻族」となります。
1親等とは、両親または子どもがこれに該当し、2親等は兄弟や姉妹それから祖父母、孫のことを指します。
ちなみに、配偶者は扶養控除の対象とはなりませんが、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が受けられます。
ただし、扶養者の年間所得が1,000万円以下であることが条件です。
出前館の扶養人なる要件②:生計が一であること
扶養控除の対象になる条件の二つ目は、生計が一であることです。
生計を一にするというのは、日常生活を送る際に、生活費を一緒にしているという意味です。
しかし、親族が別居の場合は下記の2点に注意しましょう。
①別居の親族であっても、修学または勤務といった余暇のときは、親族と生活をともにしている。
②生活費や学費、または医療費などを常に送金している。
<生計を一であることの例>
①親族とは別居しているが、生活費または学費などの送金を継続的に行っている。
②基本的に同居して生活している
③夫は単身赴任だが、正月やお盆の連休には、妻子と一緒に生活している。
出前館の扶養になる要件③:16歳以上であること
扶養控除の対象になる条件の3つ目は、16歳以上であることです。
正確には、扶養控除を受ける年の12月31日の時点で、16歳以上であれば扶養控除の対象となります。
該当する例としては、定年した両親、または大学生の子どもなどです。
原則として、子どもの年齢が15歳以下になると、扶養控除ではなく「児童手当」が適用されます。
児童手当のポイントとしては、自治体による認定を受けると年3回の手当がもらえることです。
なお、児童手当の支給時期は、基本的に6月、10月、3月です。
出前館で扶養から外れない金額は48万円まで
一般的に知られている扶養内で働ける金額は、年間で103万円です。
しかし、出前館の場合は48万円を超えてしまうと扶養から外れてしまいます。
そこで、こちらの章では、出前館で48万円を超えると、なぜ扶養から外れてしまうのかを解説します。
また、48万円を超えても、扶養から外れない方法についてもお伝えします。
出前館で扶養から外れない金額が48万円の理由
それでは、出前館で48万円以上稼ぐと、扶養から外れてしまう理由を解説していきます。
まず理由としては、扶養控除は法律上48万円の所得がある人には適用されないからです。
<扶養親族に該当する人の範囲>
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
~国税庁より引用~
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
上記の説明の中に「所得」とありますが、所得は「収入」とは全く違う意味で使用します。
間違えやすいと思うので、ここで簡単に解説します。
収入というのは、あくまでも「入ってくるすべてのお金」のことをいいます。
例えば、個人事業主であれば、事業によって発生した売上が、収入です。
そして、会社員の場合は手取りではなく、給料の総支給額が収入です。
一方で所得は、個人事業主で説明すると収入から、必要な経費を差引いた金額が所得です。
出前館の場合、経費になるものとしては、ガソリン代や駐輪場、駐車場代などがあります。
例えば、出前館での売上が50万円あったとしても、必要経費が2万円以上あれば扶養から外されることはありません。
注意点としては、出前館の経費として認められる金額は30万円未満というところです。
また、一度に計上できる金額は10万円未満なので気を付けましょう。
出前館で経費に認められる一例 | |
---|---|
①出前館や注文者とのやり取りで利用した電話料金 ②配達に必要な自転車やオートバイの購入費用 ③配達に必要なオートバイの燃料代 ④配達に必要な自転車やオートバイの駐輪場代 ⑤配達に必要な自転車やオートバイのメンテナンス代 ⑥配達で必要な自転車やオートバイの損害保険料 |
出前館でも掛け持ちをすれば48万円を超えても扶養から外れない
出前館のアルバイトなどで働く際、中には48万円以上稼ぎたいという方もいるかと思います。
残念ながら、出前館のみで働く場合、48万円を超えると原則として扶養から外れてしまいます。
ただし、他のアルバイトの掛け持ちで、給与をもらって働くのであれば、年間103万円までは扶養内で働けます。
その理由は、事業所得と給与所得の違いにあります。
出前館の事業形態は業務委託契約なので、得られる収入は※①事業所得です。
一方で、コンビニやガソリンスタンドなどで働く場合、もらえる収入は※②給与所得になります。
給与所得には、※③給与所得控除というものがあり、年間の給与が165万5千円未満なら、年間55万円が控除されます。
給与等収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
1,625,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
従って、出前館の所得48万円の他に、55万円まで稼いでも扶養内から外れないのです。
ですから、48万円+55万円で合計103万円まで働けるという訳です。
※①事業所得とは
事業所得は事業を行って得られる所得で、ある程度の生計が立てられる規模の所得のことを言う。
また、反復継続して得られる場合は、事業所得として認められる可能性が高い。
※②給与所得とは
給与所得は会社からもらった、給与や賞与から控除の金額を差し引いた金額
※③給与所得控除とは
給与所得控除は、給与所得者の住民税や所得税の計算を行う際に適用される控除の1つ。
会社員または公務員は給与所得者の収入に応じて、一定額が差引かれる。
これにより、課税対象になる所得金額が下がるので、住民税と所得税が減額する。
出前館で扶養から外れるとどうなる?
ここまでは、「出前館の扶養内で働けるのはいくらまで?」ということについてお話してきました。
では、もし仮に扶養から外れた場合はどうなるでしょう。
結論からいうと、税負担の増額などいくつかの問題が発生してしまいます。
ということで、ここからは扶養から外れたときの、問題について説明させてもらいます。
出前館で扶養から外れると扶養者の税負担が増える
出前館で扶養控除が適用されると、扶養者である親などは、所得に対して一定の控除が受けられます。
ただし、扶養控除の対象となるのは、原則として年間所得103万円以下の扶養家族がいる場合です。
つまり、出前館と他のアルバイトなどで、年間103万円以上稼いでしまうと、扶養者は控除の対象外になります。
そのため、税金の負担額がこれまでより大きくなってしまうのです。
加えて、年間所得が103万円以上になると、出前館で働くご自身も、所得税を支払わなければなりません。
しかし、出前館で働く本人が、勤労学生の場合は※勤労学生控除を受けられる可能性があります。
年間の所得が130万円未満であれば、勤労学生控除によって、所得税がかからなくなります。
なお、住民税は124万円以下であれば、発生しません。
ただし、年間の所得が103万円以上になってしまうと、勤労学生控除が適用されても扶養の対象外となります。
※勤労学生控除とは
勤労学生制度は、生活費や学費などを稼ぎながら学校に通う学生に対し、適用される控除のこと。
一定の条件を満たすことで、税金の負担を軽減できる。
<勤労学生制度の要件>
①給与所得による所得がある
②合計の所得金額が75万円以下
③特定の学校に通う生徒 ※詳しくは→こちら
出前館で扶養から外れると所得税がかかる
出前館で扶養から外れた場合、所得税の支払い義務が発生することになります。
基本的に、アルバイトまたはパートタイムというような、非正規で働く方でも所得税は納めなければなりません。
原則として、所得税が発生する金額は、年間の所得が103万円以上です。
所得税の計算は、前提として給与所得控除と基礎控除を差引く必要があります。
そして、これら2つの控除を差し引き、残った所得に対して課税されます。
また、所得税の税率というのは、年間の所得額によって異なります。
所得別の課税金額表 | |
---|---|
課税対象金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円~330万円以下 | 10% |
330万円~695万円以下 | 20% |
695万円~900万円以下 | 23% |
900万円~1,800万円以下 | 33% |
1,800万円~4,000万円以下 | 40% |
4,000万円以上 | 45% |
それでは、実際に出前館の年収が110万円だった場合で、所得税の計算をしてみます。
まず、給与所得控除の金額としては、年間の給与が165万5千円以下なので、55万円となります。
つづいて基礎控除の48万円を差し引きます。
ということで、課税所得の金額は110万円から、55万円と48万円を差し引くので、残りは7万円です。
なお、税率は年間所得が195万円以下ですので、5%で計算します。
所得税の計算式 | ||
---|---|---|
課税される所得金額 | 110-55-48=7(万円) | 7万円 |
発生する所得税 | 70,000×0.05=3,500(円) | 3,500円 |
出前館で扶養から外れると住民税も上がる
出前館で働く際に、所得額の103万円は、扶養内で所得税が免除される基準額です。
そして税金というのは、収入が上がることで所得税だけでなく、住民税まで上がってしまいます。
でも、住民税というのは、所得税の税率ほど高くはありません。
また、自治体ごとで住民税の税率は違いますが、年間およそ93万円~100万円以上の収入で課税されます。
ですので、出前館などで働く場合、年間の収入100万円が住民税の発生する目安となります。
しかし、住民税の金額は、年間収入が103万円までなら、せいぜい1万円くらいです。
なので、所得税に比べたら、それほど気にする必要はないでしょう。
以上のことから、出前館で働く際に重要視すべきところは、住民税よりも所得税だと言えます。
出前館で扶養から外れると金額次第では社会保険料もかかる
出前館などで働く際、収入次第では、社会保険料の負担もしなければなりません。
その理由は、社会保険上の扶養から外れてしまうからです。
扶養制度は、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」で分かれており、それぞれ適用される金額が異なります。
簡単に説明すると、所得税や住民税に対して控除してくれるものを、税法上の扶養といいます。
一方で、厚生年金または、健康保険に関して控除してくれる制度が、社会保険上の扶養です。
税制上の扶養が適用になる金額は、年間で103万円ですが、社会保険上の扶養は130万円です。
つまり、出前館で年間130万円以上稼いでしまうと、社会保険料まで支払わなければなりません。
原則として、自営業などの方であれば国民年金、会社員や公務員の場合は厚生年金に加入します。
社会保険にかかる金額ですが、厚生年金と健康保険では大きく異なります。
年間の所得が130万円程度の場合、健康保険は年間6万円~8万円くらい支払う必要があるでしょう。
そして、厚生年金は月におよそ1万円です。
要するに、社会保険料は会社員や公務員の場合、年間18万円~20万円くらい支払う必要があります。
従って、出前館で働く際は、社会保険の扶養についても十分気を付けましょう。
出前館で扶養を受けるための手続き
「年末調整」や「確定申告」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
出前館で扶養を受けるためには、毎年いずれかの手続きが必要になります。
原則として、これらの手続きを行わなければ、扶養から外されてしまうので注意しましょう。
では、これから詳しく説明していきます。
出前館で扶養を受ける手続き①:確定申告
出前館で年間48万円以上稼ぐと、所得税の支払い義務が発生するので、確定申告の手続きが必要です。
確定申告というのは、自営業や個人事業主の方が、所得税を納めるための手続きです。
確定申告は、その年の1月1日~12月31日までの総収入から、事業にかかった経費を差引いて「所得税額」を計算します。
所得税の計算方法は、まず年間の収入から基礎控除、または事業での必要経費を差し引きます。
そして、残った所得に対して一定の所得税率をかけて割り出すのです。
また、所得税率は所得の大きさによって違います。
このとき、年間の所得が195万円以下であれば、税率は5%です。
ただし、出前館での所得額が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
ただ、出前館だけで年間48万円を超えると、扶養からは外れてしまうので注意しましょう。
出前館で扶養を受ける手続き②:年末調整
出前館以外で、アルバイトの給与をもらっている場合は、そちらで年末調整をしてもらえる可能性もあるでしょう。
年末調整というのは、基本的に確定申告と同じく、正確な所得税を納める手続きです。
ただ、年末調整の場合は確定申告とは違い、基本的に勤め先の会社が自身の代わりに、納税の手続きをしてくれます。
アルバイトの給与明細を見ると、「所得税」の部分が控除されていることが確認できると思います。
ただ、この時点での所得税額というのは、あくまでも概算での金額です。
正確な所得税の金額は、12月の給与額が決定することで決定します。
従って、12月の給与が確定すると、所得税の計算をやり直し、正式な所得税額が決定します。
年末調整では、所得税を過払いしていれば、その差額分が返金されます。
逆に、支払いが不足している場合は、追加で納税しなければなりません。
出前館で扶養から外れる金額のまとめ
①扶養内で働ける金額は年間で48万円まで
②給与をもらうアルバイトを掛け持ちすれば103万円まで
③扶養から外れると扶養者と本人の税金が上がる
上記に本記事の重要なことをまとめてみました。
今回は、出前館が扶養内で働ける一年間の所得金額について、説明させてもらいました。
出前館では、年間48万円を超えると扶養から外れてしまいます。
扶養から外れることで、扶養者の税負担が増し、自身も所得税を納めなければなりません。
もし、扶養から外れてしまう可能性がある際は、扶養者と必ず相談しましょう。